手術ロボットメーカー「インテュイティブサージカル(ISRG)」の決算書・株価と今後見通し

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社は、医師による手術をフォローする手術用ロボットを開発、製造する米国企業です。カリフォルニア州に本社を置き、創業は1995年です。
メスで身体を切って開腹する手術は、正常な組織にもダメージを与えます。患者の体に対する負担を出来るだけ少なくする治療を「低侵襲治療」と呼び、先端に小型カメラが搭載された管を体内に入れて治療や検査をおこなう内視鏡手術や内視鏡検査などは、手術に比べて患者の負担が少ない「低侵襲治療」の1つです。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社はこの低侵襲治療が可能になる手術ロボットや機材の開発・製造のために創業されました。

手術ロボット「ダ・ヴィンチ」とは?

ダ・ヴィンチとはインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社が開発した手術ロボットです。1999年に販売が開始され、2000年に日本の厚生労働省にあたるアメリカのFDA(米国医薬局)に承認を得ます。
ダ・ヴィンチは正確には手術支援ロボットになります。精密な操作で手ブレを防ぎ、非常に緻密な動作で正確な処置を可能にしますが、動作の指示は医師が行います

都立駒込病院HPより

ダ・ヴィンチによる手術は患者の体にとってもメリットがあります。がん・感染症センターである都立駒込病院ではその利点を下記のように説明しています。

都立駒込病院HPより

ダ・ヴィンチは患者の体への負担を軽減し、医師が鮮明な画像で患部の状態を把握する手助けをし、精密な動きで手術をおこなうことで手術を支援する手術支援ロボットです。

ダ・ヴィンチの行った手術にはハードルもあります。医師にはトレーニングが必要になりますし、疾患によっては対応ができないケースもあります。三井記念病院ではデメリットとして下記の点を挙げています。

三井記念病院HPより

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社はこの手術支援ロボット「ダ・ヴィンチ」周辺機器である消耗品と、メンテナンスサービスを提供している企業です。

ダ・ヴィンチは手術を行うロボットと、医師が動作を行うコクピット部分、患部を確認するモニターの3体で1つのシステムとなります(インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社HPより)

ではインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の財務状態について決算書をチェックしていこうと思います。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の決算書

2020年1月〜3月期の決算ポイント

・売上高は10億9千億ドルで、前年同時期に比べて12%増加しました。
・成長を支えたのはアメリカにおける一般的な外科ロボットシステムと、世界的な泌尿器のロボットシステムの売上です。
・コロナウィルスの影響が不確定なため、来期の業績予想の発表は見送られました。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の決算書を見てみます。

EDGAR HPより

ここから売上高(Total revenue)、営業利益(Income from operations)、当期純利益(Net income)を抜き出し3年分の同時期の財務状態を比較してみます。

売上高は前年の同時期に比べて12%の増加を達成しています。イメージしやすいようにグラフにまとめてみました。

その他、決算発表によると、手術ロボットシステム「ダ・ヴィンチ」は237台販売されています。これは前年同時期の235台販売という実績に比べて1%の増加だそうです。
また手術ロボットシステム「ダ・ヴィンチ」は累計出荷台数は5,669台に増加しましたが、これは前年の同時期に比べて11%増加だということです。
それでは、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の売上はどの製品、どの部門が支えているのかを確認していこうと思います。

売上を支えている部門は周辺機器とメンテナンスサービス部門

各部門ごとの売上を確認してみます。インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社は下記の3部門に分かれています。
・取付け機材や付属品(Instruments and accessories)
・ロボットシステム(Systems)
・サービス(Services)

それぞれの2020年1月〜3月期の売上を確認してみます。

それぞれの売上と3年分の前年分売上との増減をまとめてみました。

それぞれの割合を確認しやすいようにグラフにしてみます。

グラフにしてみると、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の売上はロボットシステムそのものの販売ではなく、取付け機器や消耗品・メンテナンスサービスの方がずっと多いことが分かります。
売上の74%は取付け機器や消耗品の販売とメンテナンスサービスが支えており、納品した手術ロボットのメンテナンスによって利益を得ることがインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社のビジネルモデルであることが分かります。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社によると、手術ロボットは現在世界67か国、累計台数5,669台、手術を受けた患者は720万人に及ぶとのことです。

前年同時期に比べて、売上増加を達成することができましたが、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社はコロナウィルスの影響について下記の内容を公表しました。

コロナウィルスの世界的流行(パンデミック)による影響

コロナウィルスが与えた影響について

・当初、我々の予想よりも高い売上を達成しつつあったが、コロナウィルスの影響によりシステム導入の見送りや延期がありました。
・これは特に、アメリカやヨーロッパにおいて医療機関がコロナウィルス対応へシフトしたためです。
・コロナウィルスの世界大流行(パンデミック)の影響が不確定なため、今の時点で将来の業績予想は発表を見送ります。

2020年1月〜3月期において、最初の2ヶ月半は非常に良い売上に向かっていたものの、コロナウィルスの世界的大流行(パンデミック)の影響で、システム導入の延期や見送りが多く発生したようです。
特にアメリカヨーロッパでは医療機関がコロナウィルス対応を優先する必要があるため、影響が大きかったことが伺えます。

ゲイリー・グットハートCEOによると、コロナウィルスの世界的流行(パンデミック)がインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の業績に与える影響は場所によっては少ないと希望的に予想していると発表していますが、今の時点で不確定な要素が大きいため、来期の業績予想は見送られています。

それでは、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の株価を確認してみます。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の株価

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の投資家向け年間資料(2019 Annual Report)において、ナスダック上場している会社の株価を対象に算出したナスダック総合指数、ナスダック市場・ニューヨーク市場に上場しているアメリカの会社から指針となる500銘柄の平均を算出したS&P500、ヘルスケアの業種を対象としたS&P500 Healthcareに比べても株価は上がっていることを説明しています。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社2019 Annual reportより

ライバル企業の動向は?

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社の手術ロボット市場におけるライバルについても確認しようと思います。まずは、日経新聞の経済レポートから世界シェアを見てみます。

日経ビジネスHPより

現在は世界シェアのトップをリードしています。手術ロボット「ダ・ヴィンチ」を最初に開発したインテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社は、ロボットの動きや、メスを操作するアーム部分などで数百種類の特許を押さえていると言われており、この特許が他の企業の参入を阻んできたと言われています。

2020年特許が切れ、ライバル企業が参入する可能性あり

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社が持っていた特許は2019年にその大部分が期限を迎えました。市場ではこの特許切れのタイミングで多くの企業が、手術ロボットの市場に参入する可能性を指摘する声があります。
実際、参入するライバル企業として名前が上がっている企業がこちらです。

日経ビジネスHPより

その他、グーグルを運営する米国企業「アルファベット」と、医薬品会社「ジョンソン・エンド・ジョンソン」が共同で出資して設立した合弁会社バーブ・サージカル人工知能を搭載することで、手術を執刀する医師が患者の状態を把握するサポートまで可能な手術ロボットを開発していると言われています。

AI(人工知能)を武器に参入するグーグル(Google)

バーブ・サージカルのパブロ・ガルシア副社長によると、過去の多くの症例を学んだ人工知能(AI)が、患部の画像に関する情報をリアルタイムで提供したり、腫瘍の境界を提示するなど、本来医師が何千回もの手術をして得る経験と情報AI(人工知能)を通じて、どの医師にも提供できるロボットをめざしているとのことです。

今後のポイント

・特許が切れるタイミングでどのぐらいの新規参入企業が現れるのか?
・その中で、医療分野で求められるサービスを提供できる企業はどの程度現れるのか?
・現れるであろうライバル企業に対して優位を保つサービスを提供できるのか

現状、インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社は圧倒的なシェアを維持していますが、今後現れるライバル企業については注視する必要があると感じています。
特に、AI(人工知能)を搭載して医師の判断や病態に関する情報をリアルタイムで提供できる手術ロボットは個人的に強力なライバルになるだろうと感じています。

インテュイティブサージカル(Intuitive Surgical)社が培った医療業界のニーズを汲んだサービスを提供し続けることが成長につながると同時にライバル企業のサービスもチェックする必要性を感じます。

御拝読ありがとうございました。

※投資は元本が保証されません。損失が出る可能性を考え、投資するかどうかは自分自身で考え、失っても生活に支障が出ない余剰資金で行うことが大切です。

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