株価最高値を更新!復活したウォルマートの戦略

1962年にアメリカのアーカンソー州にてディスカウントストアとしてオープンしたウォルマートは現在、アメリカ国内50州で5000店舗を超え、世界では1万店舗を超える世界最大の小売業者です。株価においても過去最高値を記録しているウォルマートがアマゾン(Amazon)を超える日が来るのか、考察してみました。

この記事のまとめ

・ウォルマートは「アマゾン(Amazon)プライム会員」を意識し、有料会員サービス「Walmart+」を発表しました。
・ただ新サービス「Walmart+」の目的はアマゾン(Amazon)からプライム会員を奪うことではなく、顧客を定着させ、ウォルマートの収益を高めることでしょう。
・ウォルマートは実店舗を利用した生鮮食品の提供に商機を見出していますが、それはアマゾン(Amazon)にはない強みで、このサービスを成長させることがウォルマートの成長につながると感じます。


1962年の創業当初からウォルマートがこれほどまでに支持された理由が「EDLP(Eveyday low price)」、「毎日が低価格」というモットーの通り特売日を設けず、毎日低価格で商品を販売する戦略です。

また、食料品だけではなく、衣料品や日用品など全てのカテゴリーの商品を1フロアで販売し、1ヶ所のレジで精算するというスーパーマーケットの販売形態を生み出したのもウォルマートです。まさに現在のスーパーマーケットという業態の礎を築いたと言って過言ではないウォルマートでしたが、アマゾン(Amazon)をはじめとするECサイト(電子商取引)、いわゆるネット通販の誕生と躍進に遅れを取っていました。

そのウォルマートがここ4年ほどで株価がほぼ倍増し、売上高は2019年1月期で5144億ドル(約56兆円)に達しました。同時に、ウォルマートを支える従業員数は220万人を超え、ダグ・マクミロンCEO(最高経営責任者)は決算発表の場にて「良い四半期決算を発表することができました。世界中の従業員に感謝を評したいです。」と宣言します。

1990年からウォルマートの株価推移をみると2016年から2020年で株価がほぼ倍増していることが分かります。

さらにその場でダグ・マクミロンCEOは「オムニチャンネルで顧客を獲得する努力を続けています」と今後の躍進を方向性を示しました。この発言からもウォルマートはまずオムニチャンネルを強化することを復活の鍵をしていることが分かります。

オムニチャンネルとは?

オムニチャンネルとは、小売業が積極的に取り入れている販売戦略です。企業が製品を消費者に届ける経路をマーケティングの世界では「チャネル」と呼びます。オムニチャンネルとは、この販売経路を意味する「チャネル」に「全て」というニュアンスを持つ接頭語をつけた造語です。直訳すると「全てのチャネル」になりますが、小売業で使用される意図は実店舗やネット通販、カタログ通販やSNSなど全ての販売経路を連携させ、顧客情報を統合することで、消費者がどのような経路でも利用できるサービスの提供ということになります。

複数の購入方法を消費者が自由に選ぶことができるオムニチャンネル
(「インテージギャラリー生活者のいま、マーケティングの明日が見える」サイトより)

ウォルマートが商機を見出した「OGP」とは?

ウォルマートがオムニチャンネルを強化するために採用した具体的な方法が、OGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)です。これは、ネットで注文した商品を店舗で受け取る「取り置きサービス」です。
ネット上で、肉や野菜、果物、飲み物などの食料品を事前に注文して会計し、取りに行く店舗と時間帯を選択します。指定した時間に来店すると、ウォルマートの従業員が、注文した商品を持ってきてくれるサービスです。

Walmart GroceryHPより

パーソナルショッパーと呼ばれる従業員は、ネットショップで注文された商品を店頭からピックアップして用意します。このOGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)は、店舗を歩き回る手間や財布からクレジットカードを出して精算する手間が省ける便利さがウケ、好調をキープしていると言います。OGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)に対応するためのパーソナルショッパーは5万人を超え、対応する店舗は3000店に拡大しているのがその証拠です。
さらにこのOGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)で提供する生鮮食品という分野はアマゾン(Amazon)が遅れを取っている分野でもありました。
アマゾン(Amazon)が苦慮していた、生鮮食品という分野でウォルマートは実店舗を持っている強みが功を奏し、このサービスは同社の売り上げを牽引するまでに成長しています。

顧客からの注文を見て商品をピックアップするパーソナルショッパー(日経新聞より、写真:Maki Suzuki)

ウォルマートの次の戦略「Walmart+」とは?

OGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)を軸としたオムニチャンネルの強化の次に、ウォルマートが打ち出した戦略が有料会員プログラム「Walmart+」です。

Bloombergニュースによると、この「Walmart+」は2019年にウォルマートがスタートした食品配達サービス「Delivery Unlimited」を拡充したものになるのではないか、と言われています。
「Delivery Unlimited」は商品を最短2時間で配達するサービスで、商品を最短1時間以内に配達するというアマゾン(Amazon)プライム会員向けサービス「Amazon Prime Now」と競合していました。

ポイント

ウォルマートの新有料会員サービス「Walmart+」はアマゾン(Amazon)プライム会員を参考しているものの、会員を奪うことまで考えていないと思われます。

アマゾン(Amazon)プライムサービスはアマゾンにとっても非常に重要がサービスです。アマゾン(Amazon)プライム会員の全米会員数は1億1000万人を超えており、全ユーザーの65%を占めており、さらに会員が支払う定額料金(サブスクリプション)は192億ドル(約2兆300億円)に登ります。

Amazonの2019年のセグメント別売上高。impree businessmediaHPより

アマゾン(Amazon)プライム会員は、下記の消費行動があると調査で示されています。

半数近くの48%が少なくとも週に一度はオンラインで買い物をします。(一般消費者は34%)
会員の3/4近い73%の人がアマゾン(Amazon)で新商品を探し始め、80%以上の人は何かを購入したいと思った時にアマゾン(Amazon)で購入します。
89%の会員が他のサイトではなく、アマゾン(Amazon)で購入する可能性が高いと言われています。

何かを欲しいと思った時にはまずはアマゾン(Amazon)で検索し、さらに購入頻度も非常に高く、他のサイトよりもアマゾン(Amazon)を優先的に使用するというプライム会員はまさに全てのECサイト、小売業者が求めている消費者でもあります。

ウォルマートもアマゾン(Amazon)プライム会員のような価値のある顧客を獲得したいと思っているでしょう。現に「ShippingPass」と呼ばれる有料会員プログラムを2015年に試験的に導入した過去があります。ただ、このサービスは2017年に提供を終了しています。


そのウォルマートが再び、有料会員サービスの提供を決めた背景には、プライム会員の消費行動が小売業者にとって、まさに理想的な顧客であるからだと考えられます。

ただ、現時点でウォルマートはアマゾン(Amazon)プライム会員を奪う形で「Walmart+」会員を増やすことが考えていないと思われます。
ウォルマートとアマゾン(Amazon)では創業の業態が違い実店舗での販売から始まったウォルマート電子商取引から始まったアマゾン(Amazon)ではお互いに得意分野が違うからです。
具体的な違いを挙げれば、「Walmart+」ではアマゾン(Amazon)プライムで提供されているような動画配信や販売は行うことはないでしょう。

ウォルマートとアマゾン(Amazon)の時価総額

現状を把握するための1つの指標としてウォルマートとアマゾン(Amazon)の時価総額をグラフにまとめてみました。

4倍近い差があります。PER(Price Earning Ratio)株価収益率も見てみます。

PERは株が1株当たりの利益の何倍で買われれているかを示す数字です。PERの数字が低いと、株が生み出す利益を短い期間で回収できますのでお得という目安になります。PERの数字が高いということは、現在の株価が1株当たりの利益を稼ぎ出すまでに時間がかかるという意味ですが、それでもそのPERを維持できるのは同時に市場から企業として期待されているという面もあります。

・アマゾン PER 98.72倍
・ウォルマート PER 28.11倍

28.11倍のウォルマートも低いとは言えませんが、アマゾンの98.72倍は非常に高いです。やはり投資家から引き続き成長を期待されていることを感じます。

まとめ

ウォルマートはアマゾン(Amazon)をはじめとする電子商取引、ECサイトに大きく遅れを取っていましたが、全ての販売経路で消費者に購入の機会を持ってもらう「オムニチャネル」を販売戦略に選びました。
「オムニチャネル」の具体的な成功例として、顧客がネットで購入したものを実店舗で店員がピックアップし、来店した顧客に商品を手渡すOGP(オンライン・グローサリー・ピックアップ)が売り上げを押し上げています。生鮮食品という分野がアマゾン(Amazon)にとっては、まだ発展途中であった点も、ウォルマートにはプラスの要素でした。
さらに、アマゾン(Amazon)プライム会員のような高い頻度で、優先的に自社を選んでくれる顧客を持つために「Walmart+」という新サービスの導入を検討しています。
ただ、この有料会員サービスはプライム会員とは特典内容も異なると予想されるため、プライム会員を奪うためのサービスではないでしょう。

時価総額や株価の指標から見ても、ウォルマートがアマゾンに迫るにはまだ大きな差を感じますが、ウォルマートの実店舗を持っているという強みと、ECサイトがうまく連携しつつあることは事実のようです。
今後もこの連携を続け、「Walmart+」を軌道に載せることがウォルマートの株価上昇の鍵になると思います。

御拝読ありがとうございました。

※投資は元本が保証されません。損失が出る可能性を考え、投資するかどうかは自分自身で考え、失っても生活に支障が出ない余剰資金で行うことが大切です。

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